前回の記事は「それだけの数の教師がいて、莫迦でいられるはずがねえ(月の影 影の海)」でした。
今回も前回に引き続き、小野不由美さんの十二国記『白銀の墟 玄の月(しろがねのおか くろのつき)』発売を祝して、十二国記『月の影 影の海』からの引用でスタートします。
麒麟が選んだのだから、文句があれば麒麟に言え、と思うことだな(月の影 影の海)
「迷うなよ。お前が王だ。それを忘れるな。王など体のいい下男のようなものだが、それを民に気取られるな。自分がいちばん偉いのだという顔をすることだ」
「どうすれば、そういう気分になれるんだろう」
陽子は再び溜息をつく。
「自信があればできるだろうけど、自信の持ちようがない」
「そんなもの」
延は笑う。
「麒麟が選んだのだから、文句があれば麒麟に言え、と思うことだろうな」
陽子は少し呆れた気分で延を見返す。
「それが名君になるコツ?」
「そうだろう、きっと。少なくとも俺はこれでやってきたからな。文句があれば麒麟に言え。それでも不服なら自分でやってみろ、と」
「……なるほど。覚えておこう」
小野不由美著:十二国記『月の影 影の海』(下)
延と陽子の会話ならの引用です。
延とは雁(えん)国の王、延王のことであり、500年以上もの長いあいだ国を治めている名君です。
陽子は慶国の王、景王としてこれから新しい王として立つことができるかどうかといった状況にあります。
ここでは物語の詳細については省きます。
引用箇所では、陽子が延にどうすれば王らしくいられるのか?どうしたら自信がもてるのか?ということを尋ねています。
「麒麟が選んだのだから、文句があれば麒麟に言え、と思うことだろうな」
延のこの答えを要約するならば、他人の顔色を伺うなということです。(たぶん)
これを言葉通りに解釈するとすれば、麒麟(延の場合は延麒)が王を選定するのだから王に文句を言うなら麒麟の方に言ってくれということになります。しかし、ここで延が言いたいことはそういうことではなく、周囲からなんやかんや言われても、いちいちクソ真面目に受け止める必要はなく、自分なりの王の在り方を示していけばいいというニュアンスに感じられます。
このマインドセットは、私たちが自分の人生を自分の足で歩いていく時に持っていると便利な考え方です。
多くの人が陥る、ネガティブマインドや自己否定の根元の部分にある原因は、他人の顔色を伺うことにあります。
自分が他人からどう見られているのだろうか?
自分は他人と比べてどうなのだろうか?
自分のやる気や実力よりも、世間の常識であったり他人からの見た目や評価を自分を評価するための指針としてしまうということは、自分の人生を歩むのではなく、他人から指示された人生を歩まされていることになる可能性がとても高くなります。
他者評価や他者との比較を気にしていると、それに自分を合わすだけでもストレスがかかるし、それがうまくいかなかった場合さらにストレスがかかります。
他人の評価を気にするということは、自分の人生を歩めないばかりでなく、自分自身をも破壊してしまいかねません。
だから、私たちが自分の人生を自分のためにもっとより良くしたいのであれば、まずは他人の顔色を伺うことをやめることをすすめるのです。
もちろん、他人のいいところを参考にしたり、自分の気づいていなかった欠点を指摘されることはのような意見を自分の中で消化して、自分をより良くするために建設的に取り入れることはとてもいいことです。
避けて欲しいことは、他人の評価や他人との比較によって自分自身をネガティブな方向へと落とし込んで行くことです。まぁネガティブなマインドや状況を、自分を奮い立たせる原動力と出来る人であれば、それでも構わないですが、あえて自分から落とし穴にはまる必要もないかなと思います。
とはいえ、自分が他人の顔色を伺うことをやめたところで、他人はとやかく言ってきます。
その時に便利になるのは、その他人の意見を自分が正面から受け取らないようにするためのダミーを用意することです。
「麒麟が選んだのだから、文句があれば麒麟に言え、と思うことだろうな」
延であれば、そのダミーが麒麟だということです。
言葉や評判、またはぞの場の空気感といった情報でも、直接自分で受け取ってしまうと不思議なもので身体にダメージが残ります。ストレスです。
だから、自分への誹謗中傷であったり、ネガティブな攻撃であっても、自分で直接受け取ることはおすすめしません。
そこで自分のダミーを情報空間に用意するのです。
そのダミーが実際に実在する人物でも構わないし、自分の分身でもいいし(サッカーの本田選手のリトル本田のような)、自分の部屋にあるマイメロディのぬいぐるみでも観葉植物でも何でもいいので、自分へのネガティブな攻撃などは全部そのダミーに受け取ってもらいます。
自分が受け取る代わりに代理で受け取ってもらうのです。そうすると、自分自身は直接的を受けていないのでストレスもほとんどかからないし、ネガティブな攻撃に対し客観的に見ることも出来ます。
皆さんもご存知の通り、言葉の力というのはとても強いパワーを持っています。これがポジティブなものであればいいのですが、ネガティブなものであればまともに受け止めてしまうことは物理的な暴力に匹敵するくらいかそれ以上のダメージを受けてしまいます。
私たちは自分の人生をより良く生きるために、自分自身を守ることも知っておくべきです。
その中のひとつとして、情報空間にダミーを置き、自分に対するネガティブな言葉や情報などを逸らせてダミーに身代わりになってもらうことはとても有効な手段となります。
その大前提として、他者評価や他者とに比較というような、他人の顔色を伺う人生をやめることも必要となります。
頭を使ってより賢くより快適に生きていきましょう!!
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。