前回の記事は麒麟が選んだのだから、文句があれば麒麟に言え、と思うことだな(月の影 影の海)でした。

さて、今回もまた前回に引き続き、小野不由美さんの十二国記『白銀の墟 玄の月(しろがねのおか くろのつき)』発売を記念して、十二国記『月の影 影の海』からの引用でスタートします。

生き延びて、必ず帰る。それだけが陽子に許された望みだった(月の影 影の海)

女の子は清楚で可愛いのが一番。従順で素直なほうがいい。穏和しすぎるぐらい内気で充分。賢くなくていいし、強くなくていい。

陽子自身も、ずっとそう思ってきたのだけど。

「そんなの、嘘だ……」

穏和しく捕まればいいのだろうか。達姐に売られていればよかったのだろうか。

陽子は布を巻いた剣の柄を握りしめた。多少なりとも陽子に覇気があったら、そもそもケイキに会った時にもう少し強い態度で臨めたはずだ。せめて何のために、どこに行くのか、行き先はどういう場所でいつ帰れるのか、最低限のことぐらい訊けたはずだった。そうすればこんなふうに、途方に暮れることもなかった。

強くなくては無事でいられない。頭も身体も限界まで使わなくては、生き延びることができない。

——生き延びる。

生き延びて、必ず帰る。それだけが陽子に許された望みだった。

小野不由美著:十二国記『月の影 影の海』(上)

 

女の子は清楚で可愛いのが一番。従順で素直なほうがいい。穏和しすぎるぐらい内気で充分。賢くなくていいし、強くなくていい。

 

これは理想の女性像として言われていることがあるパターンですね。

しかし、この女性像がその人にとって本当に理想の姿なのでしょうか。

 

いやいや理想であるとは限らないどころか、場合によってはマイナスな方向に作用してしまうことがあるマインドセットと言えるでしょう。

 

なぜなら、この理想の女性像は本人にとってではなく周りの人にとって『都合の』いい女性像だからです。

 

まぁこれが女性でなくても、『従順で素直なほうがいい。穏和しすぎるぐらい内気で充分。賢くなくていいし、強くなくていい』となれば、自分の都合良く言われてことだけを素直にやってくれる人材を求めている権力者にとって、これほど理想的な部下はいません。

 

陽子自身、父親にこのように育てられてきたものの、生命の危機とも呼べる苦難の連続にあうことで、その理想像に対して「そんなの、嘘だ……」と気づかされました。なぜなら、逃げたり戦ってきたおかげで何とか生き延びているわけで、素直にしたがったり弱いからといって戦うことを放棄していたらどうなっていたことか、ということを身をもって思い知らされたからです。

 

そこで陽子に生まれたマインドセットが、『強くなくては無事でいられない。頭も身体も限界まで使わなくては、生き延びることができない』であり、また『生き延びて、必ず帰る』というゴール設定もなされます。

 

周りに頼れる存在が皆無に近く、それでも生き延びることを希望する人間に対して、『女の子は清楚で可愛いのが一番。従順で素直なほうがいい。穏和しすぎるぐらい内気で充分。賢くなくていいし、強くなくていい』というような、マインドセットは何の役にも立ちません。

 

こんな時に第一に必要となるのは、強さです。

 

強くなくては無事でいられない。

 

いざという時には特に精神的な強さが求められます。もちろん肉体的な強さもあればいいですが、こちらは精神面にマイナスな影響が出ないレベルの身体であればそれでも十分でしょう。

 

では精神的な強さというのは、どのようにしたら身に付けることが出来るのか?

 

それは強力な目的意識があることです。絶対にこうしたいという揺るぎない目的意識です。別な言葉で言えば、強い意思力でありゴール設定、または強力な信仰心やマインドセットを持つことです。

 

強力な目的意識はその人の在り方となり、生きていく上における強力な軸を形成します。

 

自分の中に強力な軸を持つ人は、他人の意見や多少の失敗に揺らぐことなく、前に進んで行くことが出来ます。

 

自分の人生を、自分の足で歩んで行く人生です。

 

『従順で素直なほうがいい。穏和しすぎるぐらい内気で充分。賢くなくていいし、強くなくていい』という自分の意思のない曖昧なマインドセットを持っていては、自分の人生を自分の足で歩くことはとても難しいことでしょう。また、いざネガティブな状況に落ち込んでしまった時に、自力で這い上がってこれなくなってしくるのは難しいでしょう。

 

私たちが私たちの人生を自分の足で歩いていくためには、精神的な強さが必要なのです。

 

その精神的な強さの源となるのは強力な目的意識です。

 

それは、『生き延びて、必ず帰る』でもいいし『毎日を楽しく過ごす』でもいいし『天意に沿って生きる』でもいいので、自分の中に本当にその想いがあるならば自分を支える強力な軸となります。

 

自分の中に強力な軸があれば迷いは少なくなるし、たとえ迷ったとしてもすぐに自分の軸に戻ることが出来ます。そしてそれが自分の在り方としても定まってきます。

 

だから何か一つでいいので、『自分はこうするのだという』強力な目的意識を持つようにしましょう。

それが、陽子のように『生き延びて、必ず帰る』でもいいのです。自分に何か困難やネガティブなことが起こった時に『生き延びて、必ず帰る』という目的意識があるだけで、それがあなた自身に強力な支えとなってくれるのです。

 

強くしなやかに生きていきましょう!!

月の影 影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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