前回の記事は自分に正直でない人間ってやつが、いつも屈託を抱えこむ(風の中の女)でした。

 

ドアを開けなければ危険はないのに、なぜ賭けなどをしなくてはならないのだ(風の中の女)

「警戒しているのか、俺を?」

「警戒するなって言う方が無理でしょう」

「開けろよ、鹿島さん。いいか、賭けろ。俺が君に取って敵なのかどうか、賭けてドアを開けてみろ」

馬鹿なことを言う男だ。ドアを開けなければ危険はないのに、なぜ賭けなどをしなくてはならないのだ。

「事情は、後で説明する。とにかく開けてくれ」

北方謙三「風の中の女」

 

人間は流される生き物です。自分で思考することは、ほとんどありません。

まぁ最初は自分で考えようとしていたのかもしれませんが、常識と呼ばれることに従ったり、周りの人たちの真似をしたり、立場が上の人の言うことを聞いていた方が、波風を立てることなく物事がスムーズに進んで行くことに気づいていきます。そうなると自分の意見を主張するのが馬鹿らしくなります。

 

その流されて生きることを繰り返しすることで、自分で思考しないで流されることが習慣となります。常識と呼ばれることに従ったり、周りの人たちの真似をしたり、立場が上の人の言うことを聞いて行動することが、あなたの思考や行動のパターンとして身に付いて、それが習慣となります。

そのような習慣を持つ人が大人になると、世間から幸せと思われるような生活を手にします。おめでとうございます。あとは手にした安定をがっちり守っていれば、もう一生安泰です。

 

この安定を失わないために、常識と呼ばれることに従ったり、周りの人たちの真似をしたり、立場が上の人の言うことを聞いて行動することにさらに磨きをかけていきます。「このままのやり方を続けていけば間違いない」というゆるぎないマインドセットが出来上がっています。

 

自分を主張せず、安定して暮らしていくことを目的として生きている人はたくさんいます。それはそれで賢い選択のひとつです。まぁ人に迷惑を掛けない限り、誰しも自分の生きたいように生きてくれればいいと思います。

 

反対に、世の中には少ないですが、自分で考えて行動したり、自分の気持ちに正直に行動したり、自分をもっと成長させていきたいと考えている人もいます。また自分を主張せず、安定して暮らしていくことを目的としてきたけど、このままで一生を終えたくないと一念発起し、新しい挑戦を試みようとする人もいます。流されないで生きようとする人です。

流されて生きている人にとって、流されないで生きようとする生き方は、「そういう考えを持つことはとても立派だと思うが、しかしそれは現実的ではないのではないか」というように捉えられがちです。

 

馬鹿なことを言う男だ。ドアを開けなければ危険はないのに、なぜ賭けなどをしなくてはならないのだ。

 

そして、流されないで生きようとする人に対して「このまま今まで通りにやっていけば、この先もずっと安定した暮らしが出来て、退職金もたくさんもらえて、老後も年金で安心して暮らしていけるのに、なぜその安定を捨てて失敗するかもしれないことに挑戦しようとするわけ。そんな馬鹿な夢を見てないで、もっと冷静になって考えなさいよ」と現状維持を強く促すアドバイスをしたりするわけです。

 

このアドバイスは強烈です。なぜなら、流されて生きている人にとっては、このアドバイスに嘘偽りなく本当に心からそう思っていて、本気で心配して言ってくれているからです。「ドアを開けなければ危険はないのに、なぜ賭けなどをしなくてはならないのだ。」というごもっともな主張は、流されないで生きようと試みた多くの人の挑戦をあきらめさせる常套手段です。

 

このように、人が新しいことに挑戦したりすることに反対する人を、ドリームキラーと呼びます。

 

善意でアドバイスしてくれているのに、それをドリームキラーと呼ぶのは心苦しいですが、人が今まで通りとすることをやめて新しい挑戦をしようとする時には、ドリームキラーはほぼ間違いなく現れます。

 

とは言え、それはしょせん他人の意見です。ここで大事なことを言いますが、本当のドリームキラーとなるのは自分自身です。他人が何を言おうが、本人にやる気があれば、やるのです。そんなもんです。最終的に一番の敵になるのは、うちなるドリームキラーであり自分自身です。

 

いいか、賭けろ。俺が君に取って敵なのかどうか、賭けてドアを開けてみろ

 

あなたがどうしたいのか。あなたがどうなりたいのか。

あなたの内なる声に耳を傾けた時に、あなたの気持ちがゴーサインを出しているのであれば、自分自身に賭けて挑戦のドアを開けてみるべきです。

 

人生のうちで重要なことはほとんどないに等しいんだ。何が起こったって、べつにおたつこことはねえやね

船戸与一「蟹喰い猿フーガ」

 

成功すれば万々歳だし、失敗してもそれは成長のための財産になります。

まぁどちらにせよ、やってみる価値はあるのです。

 

少しずつでもいいので、自分に正直に生きる道を進んで行くことをおすすめします。

 

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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