前回のブログは時間を意識する~機会損失と損切りのはなしでした。

 

お金や自分が手に入れたもの、自分が時間をかけて築いてきたものに執着することで、それを手放すことで入ってくる可能性がある大きな価値を失っていませんか、という話でした。

成功の秘訣は自分を棄てること(蟹喰い猿フーガ)

僕が執着を棄てるということを最初に意識したのは、ある1冊の本がきっかけです。

その本は船戸与一さんの「蟹喰い猿フーガ」という冒険小説です。

 

船戸与一さん(1944~2015)は「猛き箱舟」「蝦夷地別件」「山猫の夏」「伝説なき地」「砂のクロニクル」など骨太な冒険小説を世に出された有名な作家で僕の好きな作家でもあります。で、「蟹喰い猿フーガ」は船戸本の中ではさほど評価されていない作品なのですが、僕的には船戸さんの超大作で人気のある「猛き箱舟」や「蝦夷地別件」に勝るとも劣らない大好きな作品です。船戸本でどれが一番好きかと聞かれれば、「猛き箱舟」を僅差で上回り「蟹喰い猿フーガ」に軍配を上げるでしょう。

 

「蟹喰い猿フーガ」は1996年に発行された本ですが、それ以来黄色いハードカバーのその本をぼろぼろになるほどに何度も繰り返し読んでいて、いわば僕のバイブルと言っても過言ではない、そんな小説なのです。

 

その「蟹喰い猿フーガ」の冒頭で、とある作家が主人公に対してインタビューするシーンがあるのですが、その一部を抜粋して紹介します。

「ただね、成功の秘訣はたったひとつしかない」

「何です?」

「じぶんを棄てること」

「どういうことです、それは?」

「すべての執着心を棄てることです。そしたら、何が起こっても動じなくなる。動じないこころほど強いものはない。詐欺行為自体を愉しめるようになる。その余裕が成功をもたらすんです」

船戸与一「蟹喰い猿フーガ」

これです。このマインドセットです。

まぁ文章を見ておわかりかもしれませんが、主人公は詐欺師なのでその人の言葉をありがたがるのもどうかと思う人もいるかとは思いますが、当時の僕の心を捉えて目を開かせてくれた言葉です。コーチングで言うところの内部表現を書き換えられたひとことです。

 

このセリフで言ってる執着心と前回の記事の執着ではかなりレベルが違いますが、抽象度を上げて見れば言っていることは一緒です。

 

ひとことで言ってしまえば「細かいことは気にするな」ということです。

 

まぁひとことだけ言ってしまいましたが、この部分については、細かい解説なしで出来ればみなさんに「蟹喰い猿フーガ」を読んでもらいたいなぁと思ってます。本を読めばこのセリフが言わんとしていることも臨場感を持って感じられるからです。だからこの本については言いたいことがたくさんあるのですが今回はあえて言いません。

 

「蟹喰い猿フーガ」にはこのセリフ以外でも、Rがゆらがせるセリフがたくさんあり、また登場人物の内部表現が書き換わる瞬間がいくつか出てくるのでそういう意味でもおススメの小説です。(好き嫌いがわかれる内容ではありますが)

 

じぶんを棄てることで強くなる人もいれば、守るべきものがあることで強くなる人もいます。何が正しくて何が正しくないという単純な見方ではなく、この両方を情報空間の中で自由自在に使いこなせるようになることは賢く生きるコツにもなります。

 

ということで古い本なのであまり書店には置いてないかもしれないですが「蟹喰い猿フーガ」おススメです。

蟹喰い猿フーガ (徳間文庫)

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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