正解を与えたところで正解の導き方を知らなければ、また同じ失敗を繰り返す

 

前回の記事はもしかして貴様、えらく優秀な魔術師なんじゃないのか?でした。

今回も前回に引き続き小説『Fate/Zero』からの引用でスタートです。今回は『Fate/Zero』中盤の見どころのひとつである「聖杯問答」からのシーンです。

聖杯問答とは、7人の英霊の中で王を名乗る3名、ライダー(征服王・イスカンダル)、アーチャー(英雄王・ギルガメッシュ)、セイバー(騎士王・アーサー・ペンドラゴン)が、誰が『聖杯の王』に相応しいかそれぞれの格を見定めるため、お互いの正当さを主張しそれを自他に問う、という問答という形式を取っての真剣勝負です。

引用シーンは、セイバーの主張に対し、ライダーが真っ向から異を唱えている場面となります。

貴様は臣下を‟救う”ばかりで‟導く”ことをしなかった(Fate/Zero )

「騎士王の誉れたる王よ。たしかに貴様が掲げた正義と理想とは、ひとたび国を救い、臣民を救済したやもしれん。それは貴様の名を伝説に刻むだけの偉業であったことだろう。

だがな、ただ救われただけの連中がどういう末路を辿ったか、それを知らぬ貴様ではあるまい」

「何——だと?」

血に染まる落日の丘。

その景色が、再びセイバーの脳裏を去来する。

「貴様は臣下を‟救う”ばかりで‟導く”ことをしなかった。『王の欲』のカタチを示すこともなく、道を見失った臣下を捨て置き、ただ独りで澄まし顔のまま、小綺麗な理想とやらを想い焦がれていただけよ。

故に貴様は生粋の‟王”ではない。己の為ではなく、人の為の‟王”という偶像に縛られていただけの小娘にすぎん」

「私は……」

虚淵玄『Fate/Zero 3 王たちの狂宴』

 

私たちは、すぐに正解を求めたがります。

しかし、正解だけを知っていても、その正解の導き方を知っていなければ、それは使い物にはなりません。

 

例えば、テストであらかじめ答えを知っていたりカンニングしたりしてその答えが正しければ正解となり良い点数が取れます。しかし、問題の内容や解き方をわからずに良い点数を取れても、実際にはその内容を理解出来ていないので使いこなすことが出来ません。良い点数を取れたことに喜んでそれで終わりです。まぁ試験さえ通ってしまえば後はどうにでもなる、という風潮があることも問題なのですが、、、

もうひとつ例をあげます。慢性的な腰痛で苦しんでいる人が腕のいい整体師に診てもらったら腰の状態が良くなったとします。しかし1週間したらまた元の腰痛の状態に戻ってしまった。この場合、整体師に腰を良くしてもらったはいいですが、どうすれば腰痛にならないですむかを知らなかったために、今まで通りの生活や姿勢を続けてしまい元に戻ってしまったのです。

 

慢性的に続く身体や心の病は生活習慣病のようなもので、医師やカウンセリングに診てもらいその時に良くなったとしても、それはテストで答えだけを知っていて良い点数を取った時と同じように、良くなった時にだけ喜んでも、どうすれば同じ症状にならなくてすむのかを知らなかったら、また同じ症状で医師やカウンセリングに頼らざるを得なくなります。

 

だがな、ただ救われただけの連中がどういう末路を辿ったか、それを知らぬ貴様ではあるまい

 

私たちがフォーカスすべきなのは、正しい答えを知ることよりも、正しい答えの導き方を知ることです。問題に対して、それをどう捉えどう解決に導いていくかが重要なのです。

 

正しい答えだけを求めている人は、自分の知らないことや出来ないことを常に親にやってもらう子供と同じです。親にやってもらって解決して出来たような気にはなりますが、それだといつまで経っても親がいなければ何も出来ない子に育ってしまいます。

 

貴様は臣下を‟救う”ばかりで‟導く”ことをしなかった

 

逆に、すぐに正解を教えずに、どうしてそうなるのかという理由や物の見方を教える親に育ててもらうと、同じような問題に直面した時に、自分でその問題に向き合って考えるような子に育ちます。

 

大人になってからも、ひたすら正解だけを求めている人が多く見受けられます。それも他人に頼る形で正解を求めています。しかしながら、何度も言いますが正解だけを知ってもその時だけはわかった気にはなりますが、実際にそれを生かすことにはつながりません。

 

学ぶべきは、思考する力です。物の見方であり考え方です。正解を求めることもいいですが、それよりもどうしてその正解が導かれるのかの方が大事なのです。そして自分で思考する力をつけることで、様々なことにも対応できる力が養われ、物の見方である抽象度も上がってくるのです。

Fate/Zero(3) 王たちの狂宴 (星海社文庫)

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

おすすめの記事