小説『Fate/Zero』シリーズも最終巻に突入!

 

前回の記事はこのワインがこんなにも味わい深いとは~気づきとフィードバックと習慣化でした。

引用が続いている小説『Fate/Zero』ですが、今回より小説も最後の6巻目になり、聖杯戦争も佳境に入ってきました。ブログでの引用は人の在り方にフォーカスをあてており、戦闘シーンや残酷なシーン、魔術師マスターや英霊サーヴァントが敗北し脱落するシーンは載せていないので、物語の展開はわからないとは思いますが、小説『Fate/Zero』シリーズもラストに向けてより緊迫した雰囲気は感じられてくるのではないかと思います。

 

今回の記事はウェイバーと彼が住みこんだ家の老主人との会話の場面です。

現状が書き換わったホメオスタシスはもう元に戻りたくない(Fate/Zero)

「……怒って、ないんですか?」

掠れきった声でウェイバーが問うと、グレン老は複雑ながらも穏やかな面持ちで首を傾げた。

「まぁ、そりゃ怒って当然のところなのかもしれんがな……マーサのやつ、ここ最近は本当に愉しそうによく笑うようになったからなぁ。以前じゃ考えられんことじゃ。その辺はむしろ、お前さんがたに感謝したいぐらいでな」

(略)

「むしろな、お前さんがたの事情も知らんまま、はたして頼めることなのかどうか解らんが……出来ることなら、もうしばらくこのまま続けてほしいんじゃ。

儂はともかく、マーサの方はまだ当分、違和感に気付く様子もなさそうじゃ。これが夢か何なのか解らんが、儂らにとっては宝物なんじゃよ。優しい孫と過ごす時間、というのはな」

虚淵玄『Fate/Zero 6 煉獄の炎』

 

引用の状況を簡単に説明(ネタバレ)すると、ウェイバーとライダー(英雄王・イスカンダル)は冬木市に来てからグレンとマーサの老夫妻が2人で住む家で一緒に住んでいるのだが、実はウェイバーがグレン夫妻に暗示をかけて、ウェイバーをグレン夫妻の孫と思い込ませることで家に入り込んでいます。ようは老夫妻をだまして住み込んでいたわけですが、グレンの暗示が解けウェイバーが孫ではないと気づかれてしまいます。グレンは気づいたことをウェイバーに話しながらも、このままの状態を続けて欲しいと頼んでいるという場面になります。

 

グレンは騙されていることに気づきながらも、そのだまされている状態が続いてほしいと願っています。普通は騙されることに対し、人は怒りや恨みといった感情を持つ傾向がありますが、グレンはもっとだまし続けて欲しいと思っています。

 

なぜ、グレンがだまされた状態が続いて欲しいのかと言えば、その状態を自分の愛するマーサが愉しんでいるからです。自分の大事な人の笑顔が見れるからです。

 

「まぁ、そりゃ怒って当然のところなのかもしれんがな……マーサのやつ、ここ最近は本当に愉しそうによく笑うようになったからなぁ。以前じゃ考えられんことじゃ。その辺はむしろ、お前さんがたに感謝したいぐらいでな」

 

ウェイバーが孫のフリをして居候している状態を、自分の妻が心から愉しんでいて、その妻が愉しむ姿をグレンも嬉しく思っているからです。だから、この状態がとても心地よくて終わらせたくないのです。

ちなみに大事な人を喜ばすことにフォーカスすると人は強くなります。

祈りを子に託すとき母親には恐れるものなど何もない~大切な人のために(2019/5/25)

 

本来であれば、妻にだまされていることを話しウェイバー達を追い出すことが整合性の取れた正しい行いなのかもしれません。しかし、それをしたところで妻に寂しい思いをさせてしまうだけだし、ウェイバー達がグレン夫妻に何か悪さをしようとだましているわけでもないようなので、ウェーバーが暗示した世界にいるフリを自分も続けたいとグレンも思ったのです。

 

むしろな、お前さんがたの事情も知らんまま、はたして頼めることなのかどうか解らんが……出来ることなら、もうしばらくこのまま続けてほしいんじゃ。

 

コーチングなどで、自分を書き換える時のコツは自分をだますことです。自分の脳やホメオスタシスに、今の現状の自分ではなく、思い描いている理想の自分の方を現状の自分だと思い込ませることです。

 

例えば、毎日がつまらないと思っている現状の自分を、毎日が愉しいと思える自分に書き換えようと思った場合、自分の脳やホメオスタシスに毎日が愉しいことが当たり前だと思い込ませるようにするということです。

 

そのためには、モノの見方を変えたり理想とする人の真似をしたりビジュアライゼーションを駆使したりと、思考と想像力を働かせながら愉しい自分を自ら演出します。自分を書き換えるために、自分で自分をだますのです。

 

美徳を身につけていないのなら、せめてそのフリをしなさい。

ウィリアム・シェイクスピア『ハムレット

※いつも言ってることですが、セルフコーチングをひとことで簡単に表現するとすれば『せめてそのフリをしなさい』です。

 

もともと人は自分の見たいようにしか世界を見ていません。自分が世界をどう解釈しているのかが、そのままその人の世界になります。だから誰一人として同じ世界を共有していません、一人一宇宙です。

 

簡単に言えば、みんな自分の思い込みの中に生きているということです。だから理想の思い込みの世界を上手に作って、その作った思い込みの世界に入り込むことが出来れば、自分を書き換えることが出来るということになるのです。

 

儂はともかく、マーサの方はまだ当分、違和感に気付く様子もなさそうじゃ。これが夢か何なのか解らんが、儂らにとっては宝物なんじゃよ。優しい孫と過ごす時間、というのはな

 

グレンはだまされていることに気づいても、マーサのためにも自分のためにも、だまされたままの時間が続くことを望みます。これはだまされた方の世界に臨場感が高くなり現状(ホメオスタシス、またはコンフォートゾーン)がそちらの方に移っているために、今さら元の状態に戻りたくないということです。ようは現状が書き換わったということです。

 

今回の引用では自分で自分をだましたのではなく人にだまされているわけだが、それにもかかわらず、自分の望む方向に変化したためにホメオスタシスが戻ることに違和感を感じているということです。

 

これがホメオスタシスが移行した感覚です。現状が書き換わったということです。セルフコーチングで自分を書き換えるためにはこれをやってほしいのです。だから理想の自分を演じ続けるのです。理想の自分になっているフリをするのです。そうやって徹底的に自分をだますのです。

 

そして気づいたときには演じていたはずの自分が現状の自分になっているのです。

 

Fate/Zero(6)煉獄の炎 (星海社文庫)

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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