前回の記事は光が無意識に与える影響でした。

空間が無意識に与える影響①

今回は空間が無意識に与える影響です。

 

私たちの周囲のスペースや相手との距離感が、無意識に影響を与えているという話になります。

そして今回も参考書籍としてタルマ・ローベル著『赤を身につけるとなぜもてるのか?』からの引用を活用して説明していきます。

空間 その1-感情的な交渉と論理的な交渉

 

第7章 空間 その1-感情的な交渉と論理的な交渉 まとめ

(研究内容は省略)

【結論】

・パーソナルスペースを侵されると、扁桃体が活性化し、不快感を抱く

・そして、みずからの個性を主張し、ほかの人との違いを際立たせたくなる

・空間的な距離の近さを経験すると、目の前の物事との心理的な距離も近くなる

【応用編】

・多様でユニークな意見がほしいときは、狭い場所につめて座りながら会議をしよう

・相手との心理的な距離を近づけるためには、電話やメールですませず、対面でのコミュニケーションをおこなおう

・相手の論理に訴えかけたい交渉では、普段より相手との距離を取って座ろう

・反対に、相手から感情を引き出したいときは、体を寄せて座ろう

タルマ・ローベル著『赤を身につけるとなぜもてるのか?』

 

人との位置関係による物理的な距離の長さは、心理的な比喩的表現にみられる「近しい関係」や「心が離れている」といったことに影響を与えているのか?

 

結論から言えば、影響を与えています。

 

ただし、今回は距離が近いから仲良くなりやすいとか、そんな単純な話ではありません。

 

満員電車で知らない人と密着している状況で相手とラポールが築かれるかといえばそんなことはなく、内心では「もう少し離れてくれよ」と思ったりするはずです。(たぶん)

私たちにはパーソナルスペースという、他人に入ってこられると不快なスペースがあるとされています。

 

そのスペースは相手との親密度によって近くなります。逆に親密度がない人にパーソナルスペースに入られると、脳にある扁桃体で不快感を感じる反応が出ることがわかっています。

 

ということは心理的に近い関係の人は距離的にも近づくことができ、心理的に遠い関係の人は無理に距離を近づけることは逆効果になる可能性があります。

 

特に、近づかれる人の方が不快感を感じる傾向が強くなります。

 

例えば、空いてる電車の中で座先がガラガラなのに、新しく乗車してきた人が自分の隣の場所に座ってくると「こんなに席が空いてるのに、なんでわざわざ密着するような席に座ってくるんだよ」と不快に思ったりする傾向があります。しかしながら後からそのスペースを自ら選んで座った人は密着していても不快さをあまり感じないという実証が出ています。

 

逆に、同じ場面で後から知り合いが乗車してきて自分に気づいているのにも関わらず、あえて離れた場所に座られたら、その物理的な距離感が相手が感じるあなたに対する心理的な距離と思ってもいいかと思います。

 

知らない人にはむやみに近づいて欲しくはないけど、近しいと感じている人にはそれなりの距離を保ってもらいたい繊細な心も持ち合わせているということですね。

 

だから、お互いが遠慮しているような時に、あえて自分から距離を縮めて相手の懐に飛び込むことで一気に打ち解けて仲良くなってしまう場合も出てきます。

 

人間関係の面白いところです。

 

さて、研究の結果、パーソナルスペースのような近い距離に他人が入ってくると、私たちは自己主張が強くなりやすくなることが実証されています。

 

より個性をアピールするようになり、自分と他人との違いを明確にしたがる傾向があるということです。何かを選んだり意見を言う時でも、他人を違うことを主張しやすくなります。

 

また電車でも満員になればなるほど、自分のスペースを確保することにより意識が向くようになり、場合によっては自分のスペースと決めた場所に他人が入ってこれないように踏ん張る人も見受けられますね。これも形をかえた自己主張と言えるでしょう。

 

別の言い方をすれば、相手との距離が近い方が、感情的になりやすくなるとも言えます。

 

この距離感の傾向を利用して、会議で自由に活発な意見を出してもらいたい時には狭い場所でお互いに近い距離に配置したり、また感情を交えずに論理的に話をしたい時はそれなりの距離感を保つようにするような配置をすると、その場所で思い通りの時間が過ごせる可能性が高まると著者は言ってています。

 

無意識で行っている距離感についての捉え方を、意識的に見ることが出来れば、物の見方の幅がさらに広まっていきます。

 

次回も空間についての話が続きます。

赤を身につけるとなぜもてるのか?

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

おすすめの記事