自分の大事な人を喜ばせることを何よりも自分の喜びとすること

 

前回の記事は『これが自ら選んだ生き方なのだ』という気高き自負の念でした。

今回も小説『Fate/Zero』からの引用でスタートします。前回に引き続き遠坂時臣の心象風景です。

愛する娘を教え導くに相応しい、真に十全たる父となる(Fate/Zero)

迷いとは、余裕なき心から生まれる影だ。それは優雅さとは程遠い。

深く家訓を刻み込んだ胸に、凛の眼差しが、あらためてそう教えてくれた。

我が子に対して詫びなければならない自分があるとするならば、それは——敗北した自分、ついに聖杯への悲願を果たせぬまま終わった自分だ。

凛を前にして、恥じることなき父親であろうとするならば、遠坂時臣は完全無欠の魔術師でなければならない。

ならばこそ——この手で遠坂の魔導を完遂させる。

愛する娘を教え導くに相応しい、真に十全たる父となる。

決意も新たに、時臣は黄昏の道を踏んで帰路を急いだ。

再び、冬木へ。程なく訪れる夜の闇を目指して。

虚淵玄『Fate/Zero 5 闇の胎動』

 

遠坂時臣のマインドセットとゴール設定の話になります。

遠坂家の家訓は『どんな時でも余裕を持って優雅たれ』です。

参考記事「どんな時でも余裕を持って優雅たれ~マインドセットがあなたを作る」(2019/5/7)

 

時臣はこの家訓を自らのマインドセットとし、徹底した自律と克己の意志でこの家訓に忠実に自分を魔術師として磨き上げてきました。

 

もしかしたら、これが最後の機会となるかもしれない娘(遠坂凛)との語らいの中で、時臣は自分の父親としての在り方を自問自答します。遠坂時臣は父親として十全であったのかを。

 

そんな迷いを持ちながらの語らいの中で、凛から自分への無条件の敬服と信頼を感じ、そして自分の父親としての在り方を確信します。

 

凛を前にして、恥じることなき父親であろうとするならば、遠坂時臣は完全無欠の魔術師でなければならない。

 

凛には魔術師としてこれから幾多の試練が待ち構えているだろうが、その凛を導いていくために自分が父親として出来ることは、自分が完全無欠の魔術師として在ることではないかと。その在り方を示すことが、自分が父親として娘に与える最高の導きとなるのではないかと。

 

ならばこそ——この手で遠坂の魔導を完遂させる。

愛する娘を教え導くに相応しい、真に十全たる父となる。

 

愛する娘を魔術師として教え導くためには、自分が真に十全たる父であらねばならない。

そして、そのためには聖杯戦争を制してこの手で遠坂の魔導を完遂させる必要がある。

これが時臣が新たに決意した在り方とゴール設定です。

もともと時臣は聖杯戦争に勝利することで『正道な魔術師として万能の力である根源に到達する事』をゴールとしており、そのための策略も巡らし聖杯戦争で自分が勝つことが当然の儀式として捉えていました。

 

しかし戦局に不測の事態がおき、自分に万が一のことが起こることも考えねばならぬ状況に陥ったことで迷いが生じ自問自答していく中で、時臣の優先順位が高い望みが『根源に到達すること』よりも『娘のこれからの成長』の方にフォーカスが移ります。

 

これまでは『根源に到達すること』のために聖杯戦争に勝利することをゴールとしていたのが、『娘のこれからの成長』へとフォーカスが移ることで、凛をこれから魔術師として導いていくために自分に何が出来るかを自問自答し、そこで出た結論として完全無欠の魔術師として真に十全たる父親の姿を見せることが娘のための導きになると考え、そこであらためて聖杯戦争に勝利することを決意します。

 

『根源に到達すること』も『娘のこれからの成長』も、どちらもやることは聖杯戦争に勝利することながらも、その目的とする考え方は大きく変わりました。簡単に言えば、自らの欲望から娘の成長へとシフトしました。

 

自らの欲望というと何かと誤解をされやすいですが、時臣レベルの人物の欲望となるとそのへんにある凡庸な欲望のことではなく、自らが厳しい修行などで手に入れて生きた魔導の力のさらに先の根源に至りたいという、いわば魔術の世界でお釈迦様のような悟った境地に至りたいということです。

 

しかし、時臣は自分がそのような『根源に到達すること』よりも、『娘のこれからの成長』のために、凛に完全無欠の魔術師としての父で在ることを見せることの方が重要であると気づいたのです。自分の幸せよりも愛する人の幸せへと、自分の喜びよりも愛する者の喜びへとシフトしたのです。

 

ここで重要な点は、時臣は自分の欲望を放棄したわけではないということです。

注目してほしいのは『愛する人を喜ばせることで自分が喜ぶこと』へ欲望の形が変わっただけで、自分の欲望であることには間違いないのです。自分が心からやりたいことが『娘のこれからの成長』でありそれが自らの欲望であり喜びなのです。

 

時臣の一連の思考の変化は、パラダイムシフトの変換であるとか抽象度の階段を一つ上に昇ったと呼ばれるような、自分を一つ上の世界へと成長させていくような現象ともつながります。

 

そして実は、この『自分の大事な人を喜ばせることを何よりも自分の喜びとすること』というのが自分を成長させるための隠れキーワードでもあります。人の喜びを自分の喜びとすることで、自我という自分へのこだわりが消えてゆき、世界が広がったり行動や成長するスピードが加速していくのです。

 

自分のゴール設定がなかなか出来ないという人であれば、「あなたの大事な人をどうしたら喜ばせることが出来るか」ということを考えてそれを是非実行してみてください。あなたの世界がどんどん良い方向に変わっていくはずです。

 

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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