行動するからこそ感じる新しいステージの壁
前回の記事は「ぼくには出来ないことばかり叶わないことばかりです①」でした。
要約すると、何かを手にした未来にだけ幸せを見るのではなく、輝かしい未来を描きながらも今現在を楽しく幸せに生きていこう、という内容でした。
今回は前回と同じ『テガミバチ』の引用文を使って、違う角度からの内容をお届けします。
ぼくには出来ないことばかり叶わないことばかりです②(テガミバチ)
リリー・コンフォート「ラグ・シーイングはまるで女帝様に愛されて生まれてきたみたい だから『光の子』だって」
ラグ・シーイング「ぼ… ぼくのこと…!?」
「みんなそう言ってますよ!」
「私もあなたくらい才能があったらな… 出来ないことが何もない…って 素敵でしょうね…!」
「私だったら…」
「そんなことない…」
「ぼくには出来ないことばかり…… 叶わないことばかりです…… 何も…」
「…… 何も…」
浅田弘幸著『テガミバチ』第12巻
セルフコーチングでセルフトークを観るときに、それがポジティブなのかネガティブなのかをチェックしたりします。
基本的には、人生を肯定的で前向きに生きていればポジティブトークが多く出て、否定的で後ろ向きに生きていればネガティブトークが出てきます。また心と身体はつながっているので、ポジティブトークを続けていれば人生に前向きになれて、ネガティブトークを続けていたら人生に後ろ向きにもなります。
だから、セルフコーチングで自分のネガティブトークをポジティブトークに書き換えるようにするわけです。
ぼくには出来ないことばかり…… 叶わないことばかりです…… 何も…
ぼくには出来ないことばかり、叶わないことばかりです というトークを単純にポジティブかネガティブかで観ると、明らかにネガティブトークに見えます。しかし本当にそうでしょうか?
私たちが何かを観る時に、外側に見えている現象だけで判断すると、判断を誤ることがよくあります。物事はそう単純なことばかりではありません。
今回の場合、ラグ・シーイングの発したセリフは表面上では明らかにネガティブトークですが、ここでフォーカスしたい点は、ラグ・シーイングがこれまでにしてきた実際の行動です。
ここでの引用だけでは、ラグ・シーイングがこれまでにしてきた実際の行動は一切わかりませんが、彼は時には弱気になることもあるが常に夢に向かって動き、そして夢をかなえ、さらに先の夢へと向かって行動し続けているこの作品の主人公です。常に行動しつづけているので、それは同時に成長も促し、周りの同僚からうらやましがられるほどの立場になりました。
しかしながら、行動すればするほど成長すればするほどに、自分にはまだまだ知らないことがたくさんあり出来ないことがたくさんあることに気づかされます。ゲームと同じようにステージをクリアすると次にはさらに難しいステージが待ち構えています。
その新しいステージで苦戦している時に「自分はなんて未熟だったんだ」と思い知らされたりします。一見この嘆きはネガティブトークに見えます。しかし、この嘆きは本質的にはコーチングで言うネガティブトークではありません。あえて言うなら「気づき」ということです。
コーチングで言うネガティブトークとは、行動をせずにやる前からあきらめるような言動であったり、現状を変えようとしないのに現状に対して不平不満を言うようなことに対してあてはまる言葉です。
ラグ・シーイングのように常に夢に向かって行動している人が、自分の前に巨大な壁を発見した時に思い知るようなネガティブトークにみえるような言葉は、自分のゴールとするところと現状の自分との差に気づいただけであり、それは自己評価が低いという単純なことではありません(一時的にそういう気持ちにはなることもあるが)。
これはゲームで言うところの新しいステージに進んだということであり、抽象度の壁をひとつ乗り越え一段階上にレベルが上がったということです。そして、この新しいステージというのは行動し続ける人にしか見ることのできないステージです。
だから、行動し続ける人は、自分には「出来ないことばかりだ」と思ってしまうような状況が訪れるのです。これは、誰よりも知識のある哲学者ソクラテスが言うところの「無知の知」であり、陰陽師のトップである安倍晴明が言うところの「楓來の枝疎くして」(自分は占いに疎いという意味)と同じです。ソクラテスや安倍晴明はその分野では誰よりも知識も実力もあるが、その世界を知れば知るほど、逆に自分にはわからない なぞが増えてくるということです。
あなたが夢やゴールに向かって行動している時に、自分自身に対しての無力感や壁に対する絶望感を感じる時があるかもしれません。しかしそれは決してネガティブなことではなく、行動しているからこそ見えてくる新しいステージの景色であり、あなた自身の抽象度やレベルが一段階上に上がったことの証であるかもしれません。
ここでフォーカスすべきは行動をしているのかどうかです。行動しているのであれば、弱気を発したり絶望感を感じたりしても、それは決してネガティブトークではないのです。
現状の中の不平不満に対して嘆いているのか、自分の実力以上の壁に対して嘆いているのか。同じ嘆きでも、その中身は天と地ほどの大きく違うのです。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。