望む答えを得るその瞬間まで、この身は道化に甘んじるとも

2019年5月21日

ゴールや在り方が大事なのであって、他者評価は気にする必要はない

前回の記事は「ただそこに覚悟が伴わなかっただけ～今の自分を棄て新しい自分になる」でした。

今回も小説『Fate/Zero』からの引用でスタートします。いよいよ言峰綺礼が悩める神父から脱皮し後戻りできない道へと進んで行きます。

望む答えを得るその瞬間まで、この身は道化に甘んじるとも（Fate/Zero ）

契約は完了し、今ここに、聖杯を巡る最強にして最悪の一組が、誰に知られることもなく誕生した。

「さあ綺礼、始めるとしようか……お前の采配で、見事この笑劇に幕を引くがいい。褒美に聖杯を賜わそう」

「異存はない。英雄王、お前もせいぜい愉しむことだ。望む答えを得るその瞬間まで、この身は道化に甘んじるとも」

愉悦に光る血色の瞳と、感慨に沈む黒い瞳は、互いに了解を交わしあった。

虚淵玄『Fate/Zero ５闇の胎動』

多くの人は、他人からの評価を気にします。だから、他人から良い評価をされたり、何らかの順位付けで自分が上位にランクされていることに喜びを感じます。逆に他人から悪い評価をされたり、役に立たない人だと思われたりすると落ち込みます。

他人からの評価を気にする人は、他人からの評価によってセルフイメージを上げたり下げたりします。良い評価をされたりほめられたりするとセルフイメージは上がり、悪い評価をされたりけなされたりするとセルフイメージは下がります。

そして、他人評価を気にする人は他人からの評価がその人のセルフイメージを作り上げるので、良い評価をたくさんされてきた人はセルフイメージが高い人となり、悪い評価をたくさんされてきた人はセルフイメージが低い人となる傾向があります。

いずれにしても、セルフイメージが他人評価に支配されていることになります。そうなると自分のやりたいことよりも他人や世間の顔色を伺って行動するようになったり、少しでも自分を良く見せようとする手段にでたりすることもあります。

それとは反対に、他人からの評価をあまり気にしなかったり、あえて他人から本当の能力よりも低く見られるような行動を取る人もいます。

例えば、かつて時代劇で人気だった『必殺仕事人』シリーズで人気だった藤田まことさん演じる中村主水は、仕事人グループのリーダー的存在であり文武ともに高い能力を持っていながら、通常の仕事や家庭内ではあえて冴えない男を演じ、昼行燈（日中にともっている行灯のようにぼんやりとしている人。または役に立たない人）とも呼ばれていました。

また、『ジョジョの奇妙な冒険』第4部で登場する吉良吉影は、子供の頃から高い能力を持っていながら、自分を目立たない存在とするためにわざと上位にならずにそれなりの成績に収め、大人になってもそのスタイルを継続してなるべく目立たないようにしています。

例に出した、中村主水と吉良吉影の２人に共通する点は、あえて他人から低く評価されるように自分を演じているところです。その在り方は道化と重なる部分があります。

道化とは、おどけた言語やしぐさで人を笑わせる言葉やしぐさであり、そういうことをする人のことです。わかりやすいとこで言えば、サーカスのピエロです。ピエロは他人から愚かだな、馬鹿だな、滑稽だな、と思わせることを自ら行います。

彼らは、他者から評価されることに何の得も感じていません。使えないやつだと思われてもセルフイメージを下げることもありません。

なぜ、彼らは他人にどう思われようとも平気なのか？

それは他人からの評価なんか気にならないような大事なことが、自分の中にあるからです。彼らの大事なこととは、本当にやりたいゴールであり、確固たる自分の在り方であることです。そのためであれば、他人評価という自分の優先順位に関係のないことを気にしているヒマはないのです。逆に評価され注目される方がめんどくさいのです。

中村主水は裏稼業がばれないことが大事だし、ピエロはサーカスが成功することが大事だし、吉良吉影は他人には理解されない趣味を楽しみながら静かに暮らしたいのです。