自嘲は剃刀のようにプライドを切り刻む～感情のコントロール

2019年4月3日

感情のコントロールでネガティブな感情の悪循環を断ち切る

前回の記事は「彼が教えてくれたのは、人形ではない自分の生きざま～生きるとは何か」でした。

最近は『Fate/Zero』からの引用が続いているので、新元号の令和を見ると、どうしても令呪を思い浮かべてしまいます。僕の思い浮かべる令呪とは、Fateシリーズで魔術師マスターが英霊サーヴァントに行使出来る絶対命令権のことです。まぁ無茶な命令をされたとしても、こちらはサーヴァントではないので華麗にスルーするだけですが、、、

ということで、今回も前回に引き続き小説『Fate/Zero』からの引用でスタートです。今回は主人公・衛宮切嗣と７人の魔術師マスターの一人であるケイネス・エルメロイ・アーチボルトの戦闘シーンから、不覚にも傷を負わされれてしまったケイネスが、逃げている切嗣を追っている時の心象風景となっています。

自嘲は剃刀のようにプライドを切り刻む（Fate/Zero）

仕掛けられた罠は子供だましの玩具のようで、その滑稽さにケイネスは笑いそうになる。だがその笑いは同時に、玩具同然の子供騙しにまんまと手傷を負わされたケイネス自身を嘲笑うものでもあった。

自嘲は剃刀のようにプライドを切り刻む。その屈辱がよりいっそう、胸の内の怒りを煽り立てる。

（略）

なのに、今の彼の有様はどうか？

自慢の礼装を発揮して追い立てる相手は、名も知らぬネズミが一匹……一分一秒が過ぎるごとに屈辱が募っていく。肩の傷の痛みは増していく。

際限ないヒステリーの悪循環。——だがそれも、ようやく終局が見えてきた。

虚淵玄『Fate/Zero ３王たちの狂宴』

ミスをしたり、上手くいかないことがあった時に、自分を責めてしまうことがありますね。何かをしでかしてしまったことに気づいた瞬間というのは、誰しもがあまりいい気分ではいられないと思います。

このような精神状態になる時は、まずきっかけとして無意識にあなたをゆらがすような感情が出てきます。この感情は、あなたの本音の部分になります。

この無意識の感情が持続するのは、ほんの数秒です。10秒前後ってところです。

無意識の感情が持続するのは10秒前後ってことは、それ以降の感情はあなた自身が意識して作っている感情ということになります。この場面で、どのような感情や情報を選択するかが、感情のコントロールと呼ばれています。

感情のコントロールを単純に上手か下手かということで言うと、なにか感情的になることがあっても、すぐに気持ちを切り替えられる人は感情のコントロールが上手く出来ていて、出てきた感情に何時間も何日も引きずられたり、精神的にどんどんネガティブな方向に落ちていってしまう人は感情のコントロールが上手く出来ていないということが言えます。

感情や思考は情報です。物理的な物があるわけではありません。物理的に物を作ったり壊れた物を直すのには手間と時間がかかりますが、情報は物理的な物とは違ってその場ですぐに書き換えることが出来ます。

そしてこの情報を支配しているのは、あなた自身なので持続させた感情や思考といった情報は、あなたの好きなように作ることが出来ます。だから、あなたが思っているセルフイメージ、信念、持続している感情などはあなたの想い通りに作っていいわけです。

自嘲は剃刀のようにプライドを切り刻む。その屈辱がよりいっそう、胸の内の怒りを煽り立てる

そうは言っても、私たちは自分の失敗やネガティブな出来事に対する感情を引きずりがちです。悪い方に悪い方にと想像力を膨らませていく傾向があります。その結果、自分自身の評価も下げてしまいます。

実は、失敗やネガティブな出来事に対する感情を引きずることには理由があります。もともと我々は狩猟や戦などで、とても長い期間を食料や安全の確保のために命がけの生活をしてきました。そのような生活の中では、ミスや失敗はその場で命を失う可能性があります。だから用心に用心を重ねる必要があったのです。そのため一度失敗したことを脳は忘れないように記憶の中にとどめようとする働きをするのです。このような遺伝子が脳の中に組み込まれているわけです。そのため、ほうっておくとネガティブな出来事や失敗の感情はどんどん膨れ上がってしまうのです。我々の記憶が失敗の記憶で出来ていると言われるゆえんです。

しかしながら、今の日本ではミスや失敗をしても、その場で命を失う可能性はほとんどありません。あなたの失敗は命に直結していません。何回でも失敗が許されている社会です。むしろ失敗を繰り返す方が経験値も増え、あなたの中の潜在的なエネルギーはどんどん上がってくるのです。

それゆえ感情のコントロールはとても重要になってきます。いつまでも失敗を気にして自分を責めて自己評価を下げることは、ほとんど何の得にもなりません。冷静な判断力を失ったり、自分自身の可能性をつぶしてしまったりと、ネガティブが重ねっていくだけです。