先にゴールの世界に飛び込んでしまうと変化が速い

 

前回の記事はなるべく新しいものに興味を持とうーとりあえず試してみるのもいいでした。

今回も小説『Fate/Zero』からの引用でスタートです。衛宮切嗣とその養子となった士郎との関係性についてにの箇所になります。

気がつけばそんな毎日の繰り返しが、変わらぬ日常となっていた(Fate/Zero)

今にして考えても、それは奇妙な生活だった。

妻と娘を棄てた男が、とりあえずは父親の素振りを通し——

両親を奪われた子供が、とりあえずは息子の素振りを通し——

気がつけばそんな毎日の繰り返しが、変わらぬ日常となっていた。

虚淵玄『Fate/Zero 6 煉獄の炎』

 

その人のいるポジションが、その人を作ることはよくあります。

会社でも、新卒の新入社員は新入社員らしく振る舞い、新入社員だった人は新卒が入社してくると先輩らしく振る舞います。同じように係長になれば係長らしく、部長になれば部長らしく、役員になれば役員らしい振る舞いになります。

これは現状であるホメオスタシスをそのポジションに合わせていることになります。

通常、ホメオスタシスは移行しにくいのですが、本人が新しいポジションに相応しく在りたいと切望し、周りの目もそのポジションとしての振る舞いを期待しているので、元のポジションのままのホメオスタシスを維持している現状であることに違和感と居心地の悪さを感じます。まるでアウェーにいるようなの状態です。認知不協和ですね。

 

脳の無意識は認知不協和は好きではありません。だからすぐにでもホメオスタシスに戻りたくなります。その時に脳は違和感を感じない新しいポジションの方を現状でありホメオスタシスであると勘違いします。

 

なので、そのポジションに相応しい自分になることが現状であり、そこに無意識のホメオスタシスが引っ張られていきます。すると、しばらくすればその新しい位置にいる自分に対して自分の意識も周りから見ても違和感がなくなってくるのです。

 

コーチング的にさらっと言ってしまえば、ゴールの方に強い臨場感があることでゴールを達成していない自分に違和感を感じ、ゴール側を現状だと勘違いした無意識のホメオスタシスが勝手にゴールを達成してくれる、という感覚です。

 

ゴールに対し強い臨場感を持つことは、ゴール達成のための有効な方法のひとつですが、これは言うほど簡単ではありません。まぁ自分が経験したことのないことであれば、それは簡単にイメージできるわけではありません。

 

だからその対策として、ゴール側の世界を体験してみることをすすめたりします。食べ物の試食とか車の試乗みたいな感じで、自分のゴール側の世界を体験してみるのです。そうすれば、ただ想像しているだけよりも臨場感の高いイメージを描けるようになります。これはこれでとても有効な方法です。

 

しかしながら、少しマッチョにはなりますがそれよりも圧倒的に効果の高い方法があります。

それは、自分の現状がどうあれゴールの世界の中に飛び込んでしまうことです。

 

妻と娘を棄てた男が、とりあえずは父親の素振りを通し——

両親を奪われた子供が、とりあえずは息子の素振りを通し——

 

衛宮切嗣は自分が命を救ったはいいが両親を亡くしてしまった7才の士郎に、施設に入るか自分の養子になるかの選択を投げかけ、士郎は切嗣の養子になることを選択し、全くの他人同士が親子として暮らすようになります。

 

これはお互いが了承したとはいえ、何の事前準備もなくいきなり場の設定が書き換えられてしまったような状況です。強制的に現状の外側にあるところに連れてこられ今からここがあなたの現状ですと言われている感じです。

 

しかし、そうなったらそうなったでその状況を現状とすべく、切嗣は「とりあえずは父親の素振りを通し」士郎は「とりあえずは息子の素振りを通し」と、とりあえずではあるが場も状況もあらかじめ設定された親子というゴール(状態)に自分のホメオスタシスを移行させます。

 

気がつけばそんな毎日の繰り返しが、変わらぬ日常となっていた。

 

そして、その親子という設定に対し「父親の素振り」「息子の素振り」をしているうちに、「気がつけばそんな毎日の繰り返しが、変わらぬ日常となっていた。」のです。

 

切嗣と士郎の関係も冒頭の会社の中のポジションの話もそうですが、先に場と状況を設定されると自然とそのポジションに相応しい自分へと変わっていくものです。(本人がそう望むなら)

 

このように先にゴールの(現状とは違った)世界に入ると、強い臨場感を想像するどころか現実世界自体がその状況なので、その世界に合わせざるを得なくなります。しかも、認知不協和のためにホメオスタシスまで新しい強い状況に適応しようとしてくれるので、本人も多少は頑張りますが無理に努力しているような感じはしません。ゆえに変化するスピードも速くなり、自分の気づかないうちにそのポジションに違和感のない状態になっているのです。

 

いずれにしても、本人がやっていることは、そのポジションに相応しい素振りを通すことです。

美徳を身につけていないのなら、せめてそのフリをしなさい。(ウィリアム・シェイクスピア『ハムレット』)

 

いつも言うことですが、そのポジションに相応しい素振りを日々繰り返すことです。繰り返すことが「気がつけばそんな毎日の繰り返しが、変わらぬ日常となっていた。」ということにつながるのです。

 

そしてさらに、場と状況もそうせざるを得ないように設定してしまえば、誰しもが変わらないではいられないのです。

 

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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