視点(抽象度)を上げることで見えてくる世界

 

前回の記事はその生涯において、幾千度、幾万度重ねてきたかもしれぬ問いでした。

今回も小説『Fate/Zero』からの引用でスタートします。今回はアーチャー(英雄王・ギルガメッシュ)の物の見方について言峰綺礼が感じていることを表しているシーンです。

迷路を彷徨うモルモットを、上から俯瞰する観察者の眼差し(Fate/Zero)

「今なお、聖杯はお前を招いている。そしてお前自身もまた、なお戦い続けることを望んでいる」

重ねて指摘するアーチャーに、綺礼は無言のまま、反駁を放棄する。

どのみち、アーチャーを前にして韜晦(とうかい)は無意味だ。この英霊は、綺礼が自分自身をも欺いている嘘でさえ見通してしまっている。そしておそらくは、綺礼が求め欲する答えの在処すら、既に承知しているのだろう。

あの真紅の双眸は、迷路を彷徨うモルモットを、上から俯瞰する観察者の眼差しだ。誘導も救助もせず、その煩悶を見下して興とするのが英雄王の愉悦なのだろう。

虚淵玄『Fate/Zero 5 闇の胎動』

 

どの視点で見るかという話になります。

セルフコーチングでも普通に生活するのでも視点の移動を使うことはとても有効です。

視点の移動といっても目の玉をくるくる移動させるという意味ではありません。それはそれで目の運動にはなりますが、ここでは物の見方の話をしていきます。

 

視点の移動とは、どの立ち位置で物事を見るかということになります。

 

視点の移動には横の移動と縦の移動があります。

横移動は同じ高さでの水平移動です。例えば、あなたが友人と会話をしている時に友人の視点から物事を見て物事を考える、というようなことが横の移動にあたります。これをすることで、自分とは違う他人の考え方を理解したり、自分から他人かどう見えているかということを客観視することが出来ます。

 

縦の移動は高さの移動です。視点を上げて見るということです。上から見て全体の流れや雰囲気をつかみます。例えば、初めて訪れる場所を住所を頼りに歩いて探すよりも、その一帯を上から見て書かれて地図を見た方が、その場所を感覚的に掴みやすくような感じです。またサッカーの試合でフィールドでプレイしている選手よりも、観客席のスタンドの上の方からフィールド全体を俯瞰して見た方が試合全体の流れがわかりやすく戦略や戦術を立てやすくなります。

 

横の移動も縦の移動も両方ともに使って欲しい視点になりますが、今回は縦の移動にフォーカスを当てて話をすすめていきます。

 

視点の縦の移動は、そのまま抽象度の高さの移動とも重なる部分があります。抽象度も視点と同じように上げることで、今まで見えていなかったことが見えてきたり、悩み事が解決出来たりします。

 

あの真紅の双眸眸は、迷路を彷徨うモルモットを、上から俯瞰する観察者の眼差しだ。

 

ネズミを迷路に迷い込ませると中々出てくることが出来ません。しかし、あなたはその迷路を上から見ることが出来るため出口に向かうための道筋がわかります。であれば、ねずみに対して上からその道筋を誘導するようなことをしてあげれば、その迷路から出ることができます。

コーチングではコーチがこの縦移動をして(横移動もします)、クライアントさんの気づきにつながるような働きかけをしていきます。(他にもいろいろやります)

 

セルフコーチングでは、当然ながらこの縦移動を自分自身がやります。視点(抽象度)を上げて俯瞰して見ることで進むべき方向性や改善点を把握し、それを抽象的な視点から具体的な行動に落とし込んで活動していきます。

 

セルフでやるとどうしても無意識で自分の観たい世界にこだわってしまう傾向(スコトーマ)があるのでやや視界が狭まってしまいますが、それを差し引いたとしても視点の上げ下げが出来るということは、あなた自身の成長はもとより周りにも良い影響を与えられる強力な武器となります。

 

かつてサッカーで大活躍された中田英寿さんは、この視点を活用して活躍された代表的な選手でした。彼はフィールドでプレイしながら同時にフィールドの全体像も人並み以上に把握することができ、誰がどこにいるか、どこにボールを出せばチャンスになるか、ということを瞬時に見極めてプレイしていました。それゆえ、フィールドという場を支配することもでき、その視野の広さに「背中に目が付いている」とまで言われていました。

 

私たちがしていきたいことは、中田英寿さんがしていたようなプレイを自分たちが活動している場所でやることです。または、迷路にはまったネズミのようになってしまった自分の今いる状況を視点(抽象度)を上げて冷静に見極めることで、自らを正しい方向へと誘導していくことです。

 

この英霊は、綺礼が自分自身をも欺いている嘘でさえ見通してしまっている。そしておそらくは、綺礼が求め欲する答えの在処すら、既に承知しているのだろう。

 

視点(抽象度)の上げ下げが出来ると、先が読めたり、悩みや迷いの出口が見えやすくなります。また、今まで気づかなかった、自分の行動するパターンや自分がはまりやすい落とし穴の存在が見えてきたりもします。

 

それは自分の未来に起こることが意識に上がるということにもなります。意識に上がったことは書き換えが可能です。ということは、あなたの理想の未来の現実化もさらにやりやすくなるのです。

 

※アーチャーの俯瞰して見る観察者の視点を真似するのはおすすめですが、彼は悩みや落とし穴にはまって煩悶としている人を見下すことが愉悦なので、その在り方はあまり真似をしないようにしましょう。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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