自分を変えるに効果的な挑戦ほど、その決断は難しい
前回の記事は「そこに安息だけは約束されている~新しい挑戦をあきらめるパターン」でした。
今回も小説『Fate/Zero』からの引用でスタートします。今回は悩める神父・言峰綺礼がいよいよ覚悟を決める場面です。
ただそこに、覚悟が伴わなかっただけの話だったのだ(Fate/Zero )
綺礼の言葉が意味するところをアーチャーが呑み込むまでに、一拍の間が空いた。
それから英雄王は腹を抱えて大笑し、何度も手を打ち鳴らした。
「なんだ綺礼——お前というヤツは——ッ! もとより続ける覚悟なのではないか!」
この期に及んで、立場を利用してまで敵対陣営の動向を探るのは、もちろん戦いを継続する意図なしでは有り得ない。綺礼は煩悶する一方で、戦略の手だけは着実に打ち進めていたのである。
ただそこに、覚悟が伴わなかっただけの話だったのだ。——ほんの数分前までは。
「迷いはしたさ。止める手もあった。だが結局のところ——英雄王、お前の言うとおり——私という人間は、ただ問い続けることの他に処方を知らない」
虚淵玄『Fate/Zero 5 闇の胎動』
覚悟の話です。
私たちは生活している中で、自分がどうするのかをはっきりさせる場面があります。
なんとなくで暮らしている人でさえ、大なり小なり何かしらの判断をしています。やるのかやらないのか、買うのか買わないのか、行くのか行かないのか、告白するのかしないのか。
判断の中でも、生き方を変えてしまうような大きな決断を迫られる場面に遭遇することがあります。そこには目には見えないけど明確な壁が存在しています。その壁を越えたら何かが確実に変わってしまうだろう確信のある壁です。
私たちは自分が心地よく過ごせる現状の中(コンフォートゾーン)にいて、そこは変わりない日常が繰り返される、ある意味ではとても平和な世界です。
しかし、自分を成長させたいとか、大きな夢を叶えたいと思ったら、当然ながら現状の外側にある知識や経験が必要になってきます。なぜなら、今までと同じ思考パターンや行動パターンで生活していても、自分を変えることは難しいからです。
なので、自分を変えていきたいと思った人は、何かしらの勉強や何かしらの体験を実際にしてみます。試食や試着みたいな感覚で、どんなもんか試してみます。こうした勉強や体験を通して現状の外側を垣間見たり、自分の現状を少しずつ広げていくことは可能です。
もちろん現状の外側の勉強やお試しをすることで壁を超えられる可能性は上がってくるので、それはどんどんやってください。
この期に及んで、立場を利用してまで敵対陣営の動向を探るのは、もちろん戦いを継続する意図なしでは有り得ない。綺礼は煩悶する一方で、戦略の手だけは着実に打ち進めていたのである。
このようなお試し感覚のことであれば、それを決断をすることは、わりかし簡単に出来ます。しかしながら、こういったライトな感覚で自分を変えるまでとなると、とても時間がかかります。
では、時間をかけずに手っ取り早く自分を変えるにはどうしたらいいでしょうか?
その方法は、自分のいる場を移動することです。自分が変わっていくに相応しい場に自分を置くことです。
ここで言う場とは、引っ込ししましょうと言っているわけではなく、所属するコミュニティであったり、生活スタイルであったり、自分の中にある価値観を、今までの現状の中とは明らかに異なる空間に自分を移動させましょうということを言っています。別な言い方をすればレイヤー(層)の移動ということになります。自分のいるレイヤーの場所を変えて移動させることが、自分を強制的に変える一番の近道なのです。
簡単な例をあげると、小学校時代にちゃらんぽらんに生きていた少年が中学校に入学して厳しい運動部に入ることで、生活パターンが明らかに変わり身体も半ば強制的に鍛えられることで人間的にも大きく変化したりします。
また、英語を覚えたい人が会社を一年休んでカナダに語学留学し、強制的に英語しか話せない環境に身を置くことで必死になって英語を身に付けようとします。
要は、自分の生きる軸となる場(レイヤー)を現状から離れた別の場所に移すことが出来れば、早く効果的に自分を変えることが可能となってくるということです。なぜなら、現状を移してしまうことであなたの中のホメオスタシスが、新しい現状となった環境にあなたを適応させるべくフル回転で後押ししてくれるようになるからです。
人間は良い悪いは別にして、環境に適応するように出来ています。ならばそれを使わない手はありません。
しかしながら、そう簡単に場(レイヤー)の移動の決断は出来ません。現状の外側の勉強やお試しは気軽にすることが出来ても、その世界の中にどっぷりつかるとなると話は別です。そこには目に見えない壁が存在するのです。
迷いはしたさ。止める手もあった。
やれば効果があるのはわかっているのに出来ないのが場(レイヤー)の移動です。この移動については、実行することで自分のこれまでの在り方さえも変えてしまうからです。
ただそこに、覚悟が伴わなかっただけの話だったのだ。
ここの決断で必要となってくるのは覚悟です。
自分の在り方さえ変えてしまうような場(レイヤー)の移動については、普段から決断出来る人であってもそれなりの悩みと大きな決断が必要になってくるのです。それを乗り越えられるのは、あえて自分から危険地帯に飛び込んで行こうとする覚悟です。
それは、人によっては自分を棄てる感覚に近いものかもしれません。
参考記事:成功の秘訣は自分を棄てること(蟹喰い猿フーガ)(2018/12/30)
今までの自分や自分の中にある執着心を棄て、新しい自分として生まれ変わることを決める。その覚悟を持って決断し現状の外側にある別世界に飛び込んで行けば、あなたは間違いなくその新しい世界で何かをつかみ取ることが出来るはずなのです。
そして覚悟を決めた言峰綺礼は、迷える神父から愉悦を追い求める〇〇神父へと変貌を遂げてゆくのであった、、、
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。