「やりたいことをやって、やりたくないことはしなくていい」とは何か?
前回の記事は「まずは娯楽というものを知るべきだ~あなたの楽しいことは何ですか」でした。
今回も前回に引き続き、小説『Fate/Zero』からの引用でスタートです。今回は7人のマスターの1人であるウェイバー・ベルベット(19才の青年)と、そのサーヴァントのライダー(征服王イスカンダル=アレクサンドロス大王)との会話です。
参考記事:ウェイバーとライダーについての過去記事
貴様のそういう卑屈さこそが、すなわち覇道の兆しなのだ(Fate/Zero)(2019/1/25)
彼方にこそ栄えあり(Fate/Zero)(2019/1/26)
2000年の時が経とうと未だ同じ夢を抱き続けている余もまた大バカ者だ(Fate/Zero)(2019/1/28)
オマエ、そんなにそのTシャツで外を歩きたいのか?(Fate/Zero)
「坊主、きさま余の覇道に異を唱えると申すか?」
「覇道とオマエのズボンとは、一切合財! 金輪際! まったくもって関係ない! 外を遊び歩く算段なんぞする前に、敵のサーヴァントの一人なりとも打ち取ってみろ!」
「ええい、気忙(けぜわ)しい奴よのう。サーヴァントの相手なんていつだってできるではないか!」
「じゃあ今やれ! 今すぐ誰か倒してこい! そしたらズボンでも何でも買ってやる!」
むぅ、とライダーは獰猛に唸って沈黙した。
「……成る程、あい判った。とりあえず敵の首級を挙げさえすれば、そのときは余にズボンを穿かすと、そう誓うわけだな?」
案に反して拍子抜けするほどあっさり譲歩したライダーに、むしろウェイバーはなおのこと脱力した。
「……オマエ、そんなにそのTシャツで外を歩きたいのか?」
「騎士王の奴めがやっておったのだ。余も王として遅れを取るわけにはいかん。――何より、この服の柄は気に入った。覇者の装飾に相応しい」
こんな度外れた馬鹿者を英雄として後の世に語り継いだのは、もしかしたら過去の歴史家たちの壮大なる悪ふざけなのではあるまいか?ウェイバーは、そんな時空を超えたミステリーにまで思いを馳せるようになっていた。
虚淵玄『Fate/Zero 2 英霊参集』
コーチングでは、「やりたいことをやって、やりたくないことはしなくていい」という原則があります。まぁ人によっては解釈に誤解が生じてしまう表現なのですが、今回はこの「やりたいこと」と「やりたくないこと」にフォーカスして話をすすめていきます。
日本語で「やりたいこと」「やりたくないこと」と言われると何となくあいまいで、かつ非常に無邪気な響きがあり、受け取る人によっては「わがままし放題にしていいってこと」と思われてしまうこともあります。
「やりたいこと」「やりたくないこと」は英語で表記されることも多く、それぞれ「やりたいこと」は「want to」、「やりたくないこと」は「have to」と言われてます。
で、「やりたいこと」「やりたくないこと」で、については英語表記の「want to」「have to」の方を軽く探ってみると、「やりたいことをやって、やりたくないことはしなくていい」の意味を日本語とは違った角度からとらえることが出来ます。
「want to」の「want 」とは
まず「want to」です。「want to」の「want 」に注目します。
「want 」には「欲する」「望む」「必要」という意味があります。まさに「やりたいこと」であり、多くの人が思い浮かべる「want 」です。
ですが、ここでは「want 」のもうひとつの意味の方にフォーカスします。それは「欠乏している」「不足している」「困窮」という意味です。実はコーチングでイメージして欲しい意味合いはこちらの方が強かったりします。
抽象度を上げて観てしまえば「欲する」「望む」「必要」と「欠乏している」「不足している」「困窮」では言っていることは同じかもしれませんが、その言葉をそのまま見れば前者に比べて後者の方が必死さが違います。後者には何かがないことに対する明らかな欠落があり、その欠落のため強烈な飢えや渇きの状態に陥っています。
それがないと自分ではない感覚であり、何が何でも絶対に手に入れたいという感覚です。イメージ的には少し大げさかもしれませんが、飢えた狼が必死になって獲物を探し求めている感覚です。その狼の中に存在している「want to」は、「ちょっと疲れたから、そこのスタバで抹茶クリーム フラペチーノ飲みながら休憩したいなぁ」が意味する「want to」とは全然違うのです。
そして「want to」に対する強烈な渇きを満たすことの喜びが行動へのエネルギーの源泉ともなり、そしてそれが成長や成功にもつながってくるのです。スタバで抹茶クリーム フラペチーノを毎日飲んで、もしかしたらエネルギーのは沸くのかもしれませんが、、、(以下自粛)
例えが誤解を生んだかもしれませんが、スターバックスは素敵なカフェです。
「have to」の「have 」とは
次に「have to」です。「have to」の「have 」に注目します。
「have 」は皆さんご存知のように「持っている」「身に付けている」「ある」という意味です。ということは既に所有しているということです。
そして「have 」が所有であるなら、先ほど説明した「want 」の欠落とは反対の意味になります。
すでに手にしていることをやる時、そこには喜びよりも「もうそれはいいよ」「また同じことをするのか」というようなうんざりする思いをすることがあると思います。またそこで使われるエネルギーもただこなすだけに消費されてしまいます。それは、ただただつらいだけの行動です。(つらくない人もいます)また、同じことを繰り返すことは現状維持を生み、新しい行動や自分で考えるということをしなくなる傾向があります。
「やりたいことをやって、やりたくないことはしなくていい」とは
このように「やりたいこと」「やりたくないこと」を英語の「want to」「have to」、特に「want 」と「have 」について見てみると、コーチングで言う「やりたいことをやって、やりたくないことはしなくていい」とは、人生をすでにあることを繰り返すだけの現状維持の「have to」で過ごすのではなく、自らの飢えや渇きを満たすことを喜びに変える「want to」で過ごしていきましょう、というようにとらえることも出来ます。
「……オマエ、そんなにそのTシャツで外を歩きたいのか?」
誰が何と言おうと、他人に何と思われようが、何が何でももやりたいという「want to」。
何より、この服の柄は気に入った。覇者の装飾に相応しい
そして、その「want to」は自分の欠落の部分に対する強烈な飢えと渇きという話をしましたが、その欠落とは決して自己肯定感を下げる意味合いで言っているのではありません。それどころか「これこそが自分のゴールに相応しい」「理想の自分であればこれがあって当然でしょ」というような、自己肯定感や気持ちをさらに引き上げる材料として機能するのです。
自分の気持ちが盛り上がるような「want to」とゴール設定をどんどん見つけていきましょう!
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました